義務教育(ぎむきょういく、Compulsory education)とは、人(国民・保護者など)が子供に受けさせなければならない教育のことである。学齢と関係が深い概念なので、より深く理解するには「学齢」の項目も参照のこと。 国や地域によっては、子供に「教育を受ける義務」があると定めている場合もある(ドイツでの例)。 義務教育の対象者を決めるときの基準に、何を用いるかによって分類される。特定年齢の間、義務教育の対象にするという方式を年齢主義と呼び、特定の課程を修了するまでを義務教育の対象にするという方式を課程主義と呼ぶ。これは、学校で進級をするときの基準についての年齢主義と課程主義とは別個の概念である。 歴史上は課程主義の義務教育制度もあったが、現代では、ほとんどの国家で年齢主義の義務教育制度を採用している。日本においても6歳から15歳までの9年間を義務教育の対象年齢としており、留年・休学などによるこの期間の増減はない。 家庭教育や社会教育なども義務教育の実際の教育活動として認可されるかどうかについては、国によってさまざまである。教育義務型の義務教育制度では、ホームスクーリングによる教育も社会的に受容されている。就学義務型の義務教育制度では、学校教育によってのみ義務教育が行なわれる。 日本では、全日制学校への就学を要件としており、家庭教育のみでは就学義務を履行したとはみなさない制度であり、就学率も高い。 他にも、外国人に対する就学義務があるかどうか(日本はなし)、どこまでが公費負担か(日本は授業料まで)など、さまざまな類型がある。 学校制度がまだ存在しない古代から、現代の義務教育制度に通ずる社会制度は存在した。古くはスパルタにおける7歳から30歳の男性に対しての義務的な教育制度が存在し、自由民に対する文武両道の教育が行われていた。またシャルルマーニュは802年に、貴族の子弟に限定されない義務教育令を公布した。中世になるとルター派の諸国では民衆に対する教育に力を入れ始めたが、中でもドイツのゴータ公国のエルンスト敬虔公が1642年に公布したゴータ教育令は、現代の教育法規と同様に授業時間、学級編成、教科書などの細密な規定がなされている点でかなり先進的なものであった。ゴータ教育令では義務教育の終了は「12歳を超えるか、文字が読めるようになるまで」と定められており、一定年齢までの在学を義務付けていないという点で終了基準は課程主義であったといえる。こういった教育制度はプロイセンのフリードリヒ2世の時代まで主流であったが、基本的には下層階級の救済という目的は薄かった。 産業革命期になると、CFD の年少児童が工場などでの労働力として使われるようになり、劣悪な環境におかれることになった。イギリスでは19世紀前半には工場法などによって年少者の工場雇用を禁止し、19世紀後半には義務教育制度が施行されるようになった。アメリカ合衆国では、マサチューセッツ州が1852年に最初の義務教育法を制定した。ただしこれは親が貧困のために子を就学させないことを許容しているものであったため、義務教育制度の本来の対象であるはずの貧困層を救済できないものであるという批判もある。 第二次世界大戦後になると、先進国ではもはや年少者が工場での労働力に用いられるようなことは過去のものとなっており、積極的な「児童のための教育」の考え方が強くなった。もはや「教育を受ける義務」ではなく「教育を受ける権利」としての考え方に転換しているため、「義務教育制度」は「教育普遍化制度」と改称すべきだとの意見(桑原敏明)もある。 強制的に学校へ送り出され、保護者も処罰される。これはヒトラー政権当時の1938年に制定された、現在も有効な条文である[1]。 明治時代から昭和時代前期における義務教育の範囲は、実質的に初等教育(尋常小学校から後に学校種を国民学校に改組)のみであった。 1939年から男子は14歳から19歳まで青年学校への就学義務があるとされ、年間210時間の定時制教育を受けることとなった。また1944年からは国民学校令によって全日制の義務教育が8年間に延長される予定であったが、戦争のため実施されなかった。 とはいえ、これら義務教育が時代の背景や情勢に左右されることはあっても、当時の日本は 世界的に見て識字率の高い国となっていた。 1947年の学制改革により、現在まで約60年続いている義務教育制度が施行された。これは、6歳から15歳までの9年間を義務教育期間とし、小学校6年間・中学校3年間をその期間に該当させるようにしたものである。この時点で特殊教育諸学校への就学義務も定められたが、実際に養護学校の義務教育化は1979年からとなる。 1998年に中等教育学校がくりっく365 として定められたため、これの前期課程も義務教育の課程となった。 現在の日本の教育については、日本国憲法第26条第2項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と定められており、この規定に基づく教育を「義務教育」と呼称している。そのため、保護者は、学齢期の人を小中学校などに通学するように取り計らう義務がある。これを就学義務(就学させる義務)という。 日本はあくまで「就学義務」であり「教育義務」という定義ではないので、諸外国によく見られるホームスクーリングは義務教育の履行とはみなされない。 また、学校教育法の第38条に「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」と定められており、これは第49条で中学校にも準用されている。そのため、市町村はこれらの学校を設置する日経225 がある。これを学校設置義務という。 また、国は義務教育の対象者の就学を奨励しなければならない。たとえば義務教育国庫負担金制度により義務教育の授業料を無償としたり、貧困家庭には就学援助制度を適用したりするなど、該当者の就学をなるべく保障することになっている。これを就学保障義務という。 また、義務教育の対象となる学齢期の子女が教育を受ける機会が十分なものとなるよう、事業所はこれらの児童を一般の労働者として使用してはならない(労働基準法による)。これを避止義務という。 以上の四つの義務によって日本の義務教育が成り立っているとされる。 教育基本法(平成18年法律第120号)の第5条2項で「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。」と規定している。 学校教育法に「義務教育として行われる普通教育」については、次のように定められる。 第21条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)第5条第2項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。