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乗数効果(じょうすうこうか, multiplier effect)とは、一定の条件下において有効需要を増加させたときに増加させた額より大きく国民所得拡大する。これを乗数効果という。国民所得の拡大額÷有効需要の増加額を乗数という。マクロ経済学上の用語である。 簡潔に説明すると、生産者(企業や政府)が投資を増やす→国民所得が増加する→消費が増える→国民所得が増える→さらに消費が増える→さらに国民所得が増加する→さらに消費が増える→・・・という経済上の効果を意味する。経済学的な数式分析を行うと、この増加のサイクルは投資の伸びに対して乗数(掛け算)的な伸びとなることから、乗数効果と呼ばれている。 尚、ケインズ派の乗数理論においては、不完全雇用の経済が前提とされている。 ある国の単年度における国民経済フローを簡単なセミナー で考える この式を解くと、Y=100となる。(I=0.1Y) ここで、企業が先行きへの期待を基にこの年の投資量を2増やし、総投資が12になったとしよう。このはじめの段階では国民所得は同量の2しか増えない。 しかし、この2はやがて家計の所得となり、消費は所得の関数であるため、その所得の90%(C=0.9Y より)の1.8が消費される。その消費1.8は同量の国民所得1.8を増加させ、さらにその90%の消費1.62を拡大させる。 こうして、貯蓄と消費への振り分けが十分に早いペースで最終段階まで進むと仮定した場合、この年における消費量が18増える。はじめの投資の増加2と合算して国民所得は20の増加(所得のうち消費されなかった分である貯蓄は2)。実に、総投資の増加の10倍である。この10倍が乗数(この場合は投資乗数)である。10という数字はどこから出てくるかというと、数式の C=0.9Y から計算される。 である。ちなみにこの場合の「0.9」のことを消費性向と呼ぶ。またこの乗数10は、限界貯蓄性向0.1の逆数でもある。 投資に使われた資金は、企業や家計の監視カメラ を周回して、その手を渡るたびに、労働力や生産物の取引を媒介し国民所得を増大させるが、そのうちの一部は周回のたびに少しずつ貯め込まれて、回らなくなる。そのため、投資の乗数効果には限界があるのである。 このことは、当初の投資によって増加した所得のうち、貯蓄されずに消費された分だけが、それと同量の新たな所得を実現することを示している。つまり、限界貯蓄性向を高めれば高めるほど、それだけ乗数効果が弱まるということになる。たとえば限界貯蓄性向が1であったとする。これは増加した所得を全く消費せず、全額を貯蓄に回すことを意味している。このとき、新たな所得はまったく生まれないことになる。 先の投資乗数の例では、当初の投資の増加分2は、最終的に生じた貯蓄2と粗大ゴミ している。また、かりに限界貯蓄性向の値を高めたとしても、それまで以前よりも乗数が下がって消費と所得が減少するだけであり、最終的な貯蓄は2のままで変化することはない。これは、貯蓄がマクロ的には投資と一致することを意味している。すなわち総投資が変化しない限り、総貯蓄が変化することはない。日常的な感覚(ミクロ)によれば、投資ができる分量は貯蓄された分量に制約されており、貯蓄をすればするほど大きな投資も可能になるように見えるが、マクロ経済では単年度の追加的な投資量によりその年の追加的な貯蓄量が決定されており、このことを貯蓄のパラドックスという。マクロ経済では単年度の貯蓄量を増やすために当年度の投資量を減らせば当年度の貯蓄量も減ることになる(参照:合成の誤謬)。 上記のトラック買取 でもあらわされるように、総貯蓄の増加分と総投資の増加分は同額になる。これは、現実の経済からすると一見誤りであるように思われる。例えば100円の貯金をしたとしてもタンスにしまえば、銀行へ預金する場合と違って融資もされず、投資に向かわないはずである。 マクロ経済学においては、この貯蓄と投資の因果関係がほぼ逆になる。総投資が存在する場合は、総貯蓄は0にはならない。仮にある年の総貯蓄を0にしようとして所得の全てを消費するような社会(その年の限界貯蓄性向=0)を考えてみた場合、新規に追加的投資をおこなえば乗数過程により無限に所得と消費を生み出すことになる。 現実にはこのような社会はありえず、これは前提とした条件(限界貯蓄性向=0)になんらかの論証上の矛盾が含まれていることを意味している。また国民経済フロー式に物価(P)を考慮したより高度な分析によれば、これはその年の名目での国民所得だけが無限に増大しハイパーインフレーションが発生していることとなる。このようにマクロ経済で見た場合はある年の総投資の存在が、その年の総貯蓄の発生理由となる。 たとえばアメリカ経済は家計による消費、企業・政府の投資意欲は旺盛である。このように総投資に見合った総貯蓄(=Y-C:所得-消費)が存在しない場合、経常収支が赤字となる(マクロバランスを参照)。ある経済の経常収支の赤字は、黒字である外国経済が、その経済において貯蓄をしていると解釈される。また世界経済の枠組みにおいては、アメリカ経済も一つの国民経済に過ぎず、世界全体で見た総投資と総貯蓄は等しくなる。 政府支出乗数:政府支出における乗数。投資乗数と一致 租税乗数:増税における乗数。政府支出乗数X限界消費性向Xマイナス1 均衡予算乗数:政府支出乗数+租税乗数 このとき均衡予算乗数はつねに1となる。このことは、たとえば政府支出を1兆円行い、この1兆円を増税で集めたとき、国民所得が1兆円だけ増加することを示している。 減税乗数:脱毛 における乗数。租税乗数Xマイナス1 政府支出の代わりに減税を選択するものとする。このときに必要となる減税額は「政府支出額X(政府支出乗数÷減税乗数)」と計算される。たとえば政府支出乗数10と仮定した場合、国民所得を100兆円だけ増加させるためには、10兆円の政府支出、もしくは約11兆円の減税が必要となる。ここで減税額のほうが大きくなるのは、政府支出の代わりに減税を選択した場合には、その一部が貯蓄に回ることによる。 景気対策として財政政策を包茎 する際には、必ずと言って良いほど、公共投資を増額すべきか減税を行うべきかという議論が行われてきた。一般的に言えば、日本では公共投資の増額が行われることが多く、米国では減税が行われることが多かったといえるであろう。 日本の景気対策で、公共投資の増額が志向されることが多かったのは、同じ金額の事業費に対して公共投資の方がGDP(国内総生産)の拡大に与える効果が大きいと考えられたからである。例えば1兆円の公共事業を追加した場合と、1兆円の所得税の減税を行った場合を比較してみよう。 公共事業費のうちで名目GDPの増加となるのは、用地費を除いた公的固定資本形成の部分である。公共事業の用地費は平均すると15〜20%程度であり、用地費の比率を高めに見積もって20%としても8000億円の公的固定資本形成の増加となる。内閣府経済社会総合研究所の短期日本経済マクロ計量モデルなどの代表的なマクロ計量経済モデルでは、公的固定資本形成の乗数では、1年目1.19、2年目1.69、3年目2.05(名目ベース)[1]。仮に乗数を1.2とすれば名目GDPは9600億円増加することになる。