製鉄所(せいてつじょ・せいてつしょ)とは、製鉄を行い鉄鋼製品を作る一連の設備がまとまって存在する工場のことである。 本稿では、その中でも日本の鉄鋼業の主流である、鉄鉱石から鉄を取り出すところから最終製品の製造までを一つの敷地内で行う(間接製鋼法による)銑鋼一貫製鉄所を取り上げる。なお、2004年7月現在、日本における事実上の銑鋼一貫製鉄所は、新日本製鐵系5(室蘭・君津・名古屋・八幡・大分)、JFEスチール4(千葉、川崎、水島、福山)、住友金属工業系3(鹿島・和歌山・小倉)、神戸製鋼所2(神戸・加古川)、日新製鋼1(呉)の15か所である。 八幡製鐵所は日本初の近代製鉄所で、明治時代に官営で誕生して以降、1934年1月29日までは単に「製鐵所」と呼ばれていた。 製鉄業は広大な敷地に加え、多様な設備・大量の用役(水やエネルギーなど)が不可欠な、典型的な装置産業である。特に、現在主流である銑鋼一貫製鉄所ではその傾向が強い。このため、製鉄所の建設に当たって、その立地条件は製鉄所の命運を左右しかねないもっとも重要な要素の一つである。 製鉄所に必要とされる立地条件は、一般に次のような項目と考えられている。 巨大な設備を支えることができる、安定して強固な地盤であること。 豊富な水利が確保できること。 原料や製品の入出荷に対応できる水深の深い整体師 がある、あるいは建築できること。 できるだけ風水害が少なく、安定した気候であること。 日本初の近代製鉄所である八幡製鐵所が官営で建設されたことからも解るように、国際競争力を持つ大規模な製鉄所を新たに建設するのは、国家的大事業であった。立地選定から始まり、土地の造成、各種設備の建設、用役の確保と供給手段の確立、物流手段の確立、防災・環境対策、情報処理・通信インフラストラクチャーの整備、そして従業員の居住地など、およそ都市をまるごと一つ作り上げるような作業が必要となる。 高炉と転炉のペアを新たに1基作るだけでも1,000億円単位の資金と数年の歳月が必要である。このため、日本国内で現在の高炉・転炉を用いた製鉄所を新たに建造することは不可能に近い。一方で、鉄鋼の消費量が急速に拡大しているアジア各国では、半ば国策として大規模な製鉄所の建設が相次いでいる。 ここでは銑鋼一貫製鉄所における鉄鋼製品の製造フローを概観する。ただし実際には、各製鉄所によって様々な創意工夫が行われている。 鉄鋼を作る原料は主に、鉄鉱石・石炭・石灰石の三つである。日本の場合、石灰石はほとんど自給できているが、鉄鉱石と石炭は事実上全量を輸入に頼っている。これらはいずれも巨大なバラ積み船で製鉄所の原料岸壁まで輸送されてくる。不用品回収 では、積荷の原料を「アンローダー」と呼ばれる装置で荷揚げし、所定の原料ヤードに移送・山積みする。原料ヤードには通常、約30〜60日分の原料が在庫される。 現在産出される鉄鉱石の多くは粉鉱のため、そのまま高炉に入れると高炉が目詰まりを起こしてしまう。そのため、還元促進剤の役目を果たす石灰石と共に焼き固める(焼結)。また、石炭も多くは粉状であり、強度と燃焼エネルギーが不足しているので、コークス炉で蒸し焼きにしてコークスにすることで、適度な強度と高い燃焼エネルギーを確保する。 鉄鉱石から鉄を取り出す工程のことを製銑と呼ぶ。日本では高炉と呼ばれる、製鉄所のシンボルとも言える巨大な溶鉱炉を用いている。大型高炉の場合、最上部までの高さは100mを超え、現在では内部容積が5000立方メートルを超える超大型の高炉も珍しくない。処理された原料は、ベルトコンベアで高炉上部に輸送され、そこから順次高炉の中に装入される。高炉の壁面下部からは1,000℃を超える熱風が大量に供給されている。炉の内部では高温の空気中の酸素とコークス中の炭素が反応して、2,000℃近い雰囲気になる。 この中で、鉄鉱石に含まれる酸素とコークス中の炭素が結合して一酸化炭素となり、還元された鉄は溶解した状態で高炉下部へと流れ落ちてゆく。また、鉄鉱石中の岩石成分は石灰石と反応してスラグとなって流れ落ちる。高炉下部には溶解した鉄とスラグが雨のように降り注いでいる。 頃合いを見計らって高炉下部に穴を開けると、溶けた鉄とスラグが流れ出してくる。スラグは比重が鉄より軽いので、この時点で容易に分離可能。こうして取り出した鉄は炭素を2〜3%含んでおり、銑鉄 (iron) と呼ばれる。多くの製鉄所では、この銑鉄をトーピードカーと呼ぶ特別な形の貨車に流し入れて、液体(溶銑)のまま次の製鋼工場に輸送している。なお、途中で溶銑予備処理(事前の簡単な成分調整)を行うケースが多い。 高炉で取り出した銑鉄はこのままでは硬くてもろく、圧延加工をすることが困難である。銑鉄から炭素分を除去し、必要に応じて他の合金元素を混ぜることで、粘り強さを持つ鋼 (steel) を製造する工程を製鋼と呼ぶ。鉄鋼の基本的な性質を決める重要な工程であり、日本の製鋼技術は世界のトップクラスを走る。 トーピードカーで運ばれて来た銑鉄は、いったん取鍋(とりべ・とりなべ)に移されたあと、内部に耐火レンガを敷き詰めた転炉に装入される。その後転炉内部には酸素が吹き込まれる。その酸素と銑鉄中の炭素が結合して一酸化炭素となり、回収される。また、必要に応じて、ニッケルやクロム等の合金元素が投入され、対流によって均一な状態になるまで攪拌される。転炉内部の鉄が所定の成分になると作業は終了し、転炉は最初とは反対側に回転して、別の取鍋に完成した溶けた鋼(溶鋼)を排出する。高品位の鋼を作る場合、溶鋼を取鍋に入れたまま特別な装置にかけて、鋼中の不純物をさらに低減させることも多い。 転炉が1回の工程で製造する鋼は約200t前後。粗大ごみ の製造ロットの基本はここで決まっている。なお、転炉では成分調整が難しい場合や、極小ロット品の製造には、電気炉で製鋼することもあるが、転炉に比べて著しくコストが高い。 取鍋で運ばれてきた溶鋼は、加工しやすいように一定の形に鋳固められるが、その工程を鋳造と呼ぶ。日本では、上下が開口した鋳型の上部から溶鋼を注入し、あたかもところてんのように連続して鋼を鋳固めてゆく連続鋳造という方式の採用が進んでいる。連続鋳造は極めて高度な技術管理が必要であり、鉄鋼各社は生産性と品質レベルの向上にしのぎを削っている。なお、連続鋳造ができない特殊な鋼については、昔ながらの鋳型を用いた鋳造が健在である。 鋳造されたものは、その形状によりおおむね下記のように分類される。これらはいずれも半製品として次の工程の材料に用いられる。