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鋳造で製造された半製品に力を加えて「鍛える」ことで、所定の形状の製品に加工する作業を圧延と呼ぶ。ハンマーのような物体で叩きながら鍛えることを鍛造と呼ぶが、圧延も基本的には同じことを行う。圧延は多くの場合、ハンマーの役目をロールが担っている。 圧延には大きく分けて、材料が赤くなるほど熱を加え、再結晶温度以上で圧延する熱間圧延(熱延)と、材料を常温のままで、もしくは多少の熱を加えただけで圧延する冷間圧延(冷延)の2種類がある。 鋳造で作られた中間製品は、まず熱間圧延で加工され、その後必要に応じて冷間圧延にも回される。また、工程中に熱処理を行うことで、製品の強度や性質を細かく制御する技術が進んでいる。圧延の結果、厚板・薄板・形鋼・鋼管などの各種鉄鋼製品が完成する。これらは必要に応じて表面処理(めっき・塗装・研磨など)が行われたあと、検査を経て、出荷可能な製品として倉庫に移送される。 倉庫に保管された製品は、需要家からの要請などに応じて所定の場所まで輸送される。向け先が比較的近い場合や遠くても緊急を要する場合には、トレーラーによって陸送されるが、多くの場合は製鉄所の出荷岸壁から内航船でいったん物流拠点に輸送され、そこから小口陸送されている。製品の出荷に鉄道を用いることは、現在ではまれである。輸出は基本的に全て海上輸送となっているが、緊急時には主に流通業者の費用負担で航空機による輸送が行われることもある。 年間数百万tの鉄鋼製品を生産する製鉄所は、大量の物資や用役を消費している。それは環境に多大な負荷をかけていることに他ならない。その負荷が適正なものかどうかをよく見極めることが肝要である。 鉄鋼製品を1t作るのに水が100t必要であると言われるほど、鉄鋼業は設備冷却・加工品の冷却・洗浄などに大量の水を必要とする。こうした水は工業用水から確保しているが、使い終わった水は徹底的に回収・処理することで、極力新水の使用を削減している。現在の日本の製鉄所における水の再利用率は90%を大きく超えており、熱で蒸発した以外はほぼ全量再利用されている。 製鉄業には各所で加熱工程があり、FX な熱量が必要となる。こうした熱源には、コークス炉・高炉・転炉などで発生する一酸化炭素を主成分とする可燃性ガスを回収して用いている。製鉄所内にはこれらのガスを貯蔵するタンクや配管がいたる所に見られる。多くの製鉄所では場内で回収されるガスで全ての熱源を賄えるばかりか、都市ガス会社に余剰ガスを販売している所もある。また、加熱時に発生した大量の熱は、仕事が終わった後も回収され、予熱・乾燥などに用いられている。また、でき上がったばかりのスラブなどの半製品はかなりの高温であるが、それをできるだけ冷却させずに熱間圧延することでエネルギー消費を抑制しようという動きも盛んである。 製鉄所の設備を稼働させるのに電力は不可欠である。これらの電力は電力会社から購入しているが、製鉄所内では自家発電も盛んである。先ほどの場内発生ガスを利用した発電所の他に、高炉で発生した高温高圧のガスでタービンを回すことにより発電する炉頂圧発電といったエネルギー回収設備が実用化されている。 転炉での製鋼作業や製品の切断などには、大量の酸素が使用される。酸素は大気中から分離設備で製造され、場内に供給される。製鉄所で製造される酸素は多量であり、同時に分離される窒素・アルゴン・二酸化炭素などと共に、ガス会社に外販されている。ある地方では製鉄所の酸素設備が壊れると病院での手術ができなくなるほど、重要な供給源になっている。 高度成長期に発生した大気汚染による公害病は国や企業の責任として、幾つかのいわゆる公害訴訟が提訴され、幾つかの訴訟では製鉄所を抱える鉄鋼メーカーが被告となった。製鉄所での工程には燃焼現象が欠かせないうえ、その規模が大きいため、製鉄所がいわゆる大気汚染物質の大きな発生源になっているのは事実である。また、地球温暖化の原因物質としての二酸化炭素も、鉄鋼業はその性質上大量に発生させている。原料ヤードにある鉄鉱石や石炭などによる粉塵被害も、健康に影響がないとしても近隣住民にとっては大きな問題である。再利用できないレベルになった廃熱もかなりの量になり、製鉄所周辺の海水温が上昇して、局地的に生命層が変化していることも多い。 ただ、鉄鋼メーカーが、公害問題が重要視されてからやむを得ずという一面があるにせよ、その時々の最高水準の公害防止設備を導入してきたことも事実である。日本の製鉄所の環境対策は現在世界トップレベルであり、その導入がほとんど進んでいない中国などへの技術協力などが、今後の大きな課題である。また、二酸化炭素の発生に関しては、製品重量当たりでは鉄鋼はアルミニウムやチタンなどより一桁小さいレベルであることにも留意する必要があろう。 鉄はスクラップから容易にリサイクルが不動産 であることからもともと環境循環型素材であるといえる。さらにアルミニウム・銅といった非鉄金属についても脱酸材や成分調整材としてリサイクルが行われている。 環境への関心が高まる中、ゴミの分別収集が多くの自治体に広がっているがプラスチック類の処置に困っているところが多い。プラスチックを元の原料にリサイクルするのが理想的な循環サイクルであるが、実際には不純物の混入・分子鎖の切断等によりまったく同質の原料にリサイクルを行うのは難しいのが現状である。そのためプラスチックと可燃物を混合・成形したRDF等に加工する自治体も多いのだが、RDFに対応した発電所が少ないという問題がある。近年、いくつかの製鉄所ではプラスチックを高炉やコークス炉に装入し熱源・炭素源としてリサイクル可能な設備を導入している。この方式では大量のプラスチックを処理できること、高温で処理を行うためダイオキシンの発生が少ないことが特徴である。 製鉄所で製造される製品は、基本的には全て受注生産品であり、すべての製造命令には、それに対応する注文が存在する。また、銑鉄から最終製品になるには通常1か月から2か月、長い製品では4か月ほどもかかる。さらに、問屋などの流通業者が介在するとはいえ、鉄鋼業の顧客層の広さは群を抜いており、すべての顧客に正しいタイミングで正しい製品を届ける作業は大変である。 1年間の製品出荷量が百万t単位となる製鉄所にとって、こうした製品の注文情報や工程進捗状況をどう処理するか、また中間製品や最終製品をどう輸送するかは重要な課題である。 鉄鋼業は、全産業の中でもっとも早くコンピュータによる情報処理が導入された業界の一つである。製鉄所では膨大な量の受注情報をもとに、製銑・製鋼・鋳造工程までの中間製品を作る計画を策定し、次に完成した中間製品をどのタイミングで各圧延工場で加工するかを決めてゆく必要がある。効率よく生産を行うには、製造ロットをまとめたり、圧延サイズの順番を工夫したりなど、様々な制限が必要となる。また、それぞれの注文に応じた適切な仕様を製品に付加する必要もある。大きな製鉄所になると年間100万件にも達する注文をこなすためには、大量の情報を速く正確に処理し、その情報を必要な部署に正しく伝達できる能力が必要となる。また、外為 の稼働状況や、製品の品質データなどを常時収集・分析・保存する必要がある。 こうしたニーズに対応するため、製鉄所では産業用にコンピュータが実用化された初期から、当時の最高水準のコンピュータが多数導入されている。現在でも各製鉄所にはスーパーコンピュータが稼働しているほか、それを補佐する多数のメインフレーム機、さらには工場毎・ライン毎のプロセスコンピュータなど、無数のコンピュータが存在している。また、所内のスタッフ要員の多くにも、個人単位でパソコンが支給されていた。これらのコンピュータはかなり早い時期から営業部門も含めた全国的規模で大規模なネットワークが構築されていた。1990年代前半、apple社のパソコンを用いた日本国内のネットワークのうち、上位五つのうち二つが鉄鋼メーカーのものであったことは一部では有名だった。その当時、製鉄所内で700台を超えるパソコンが全てLAN接続され、光ケーブルが10km以上あるだけでも、情報産業界から驚きを持って迎えられていたが、製鉄所内ではそれでも能力が不足していると考えられていたらしい。